第131回 家庭医療セミナー in いわき ~実践家庭医塾 Online~ 2022年7月

令和4年7月21日(木)、第131回家庭医療セミナーをオンライン形式で開催しました。

今回は、東京慈恵医科大学の渡邊莉子先生が症例を発表しました。

【症例】  ドキドキ 花子 さん(79歳 女性)
【主訴】  動悸、呼吸苦
【現病歴】
X年Y月9時頃に起床し自宅廊下を歩行中に動悸と呼吸苦を自覚し、不安になって血圧を測定したところ収縮期血圧200㎜Hg以上だった。かかりつけ医より高血圧時はロラゼパムを服用するよう指示されており、服用したものの動悸症状が改善せず救急要請した。
【既往歴】
高血圧症、脂質異常症、不安神経症、パニック障害、胃食道逆流症、胆嚢結石症、狭心症(正確な診断なく詳細不明な状態)、右卵巣摘出後(詳細不明)
【常用薬】
カンデサルタンシレキセチル 2mg 1T/1X 朝食後
ロスバスタチンカルシウム 2.5mg 1T/1X 夕食後3日に1回
ファモチジン 20mg 2T/2X 朝夕食後
ニコランジル 5mg 3T/3X 毎食後
ロラゼパム 0.5mg 1T/不安時、血圧高圧時
ニフェジピン 10mg 1T/1X 血圧高値時
【嗜好品】  飲酒・喫煙なし
【アレルギー】 なし
【生活歴】
Y-3月に夫が死去し自宅で独居。子供が二人おり、息子は福島市に単身赴任中、娘は埼玉県と東京都を行ったり来たりして夫と暮らしている。夫の死去後は週に1回は息子或いは娘と会っており、グループ通話で連絡を取り合うことも多い。近所付き合いは少なく唯一の友人は本人よりも高齢。ADLは自立しており介護保険の申請はない。

今回の症例のポイントとしては、

・高齢で独居であること
 ⇒3か月前に夫を亡くしたばかりの状態
・子供も遠方に住んでいる
⇒近隣に頼れる存在がいない
・10数年間降圧薬の変更はなく、血圧高値時はロラゼパムを、尚高値が持続した場合はニフェジピンを服用するようにというかかりつけ医からの指示
 ⇒真の高血圧がカバーされてコントロール不十分な可能性がある
・上行大動脈径の拡大の指摘
⇒より厳格な血圧コントロールの必要性

来院後、症状は改善し、また身体・検査所見で異常を認めないことから不安神経症に伴う発作的な症状と診断し、血圧についてはかかりつけ医に相談するよう指示し帰宅とした。

しかし、血圧高値による不安や動悸の出現により、予定外の外来受診や救急要請を繰り返した。
そのため、不安発作予防にパロキセチンを少量で導入する方針とした。また、頻回の外来・救急受診を繰り返していること、新規薬剤導入することから、外来受診の間隔を短期間にし、今後の生活に関することも含めて花子さんとの対話の時間を多く設けることとした。

【本日のディスカッションのテーマ】
(前半)
・繰り返す外来・救急受診を避けるために何ができたでしょうか。
・今後、花子さんにはどのような介入が必要でしょうか。

(後半)
・かかりつけ医と地域の中核病院との連携システムの中で改善できる点は何が考えられるでしょうか。

と、セミナー内容のご紹介はここまでとしまして…

今回の症例もとても悩ましいものだと思います。患者さんの不安を和らげるためにできることは?また、主治医(かかりつけ医)が他にいる状況で、病院勤務医ができることや連携システムについて課題は何か?など参加者から様々な意見が挙がり、お互いに学びを深めた様子が見られました。

家庭医療セミナーでは多くの方のご参加をお待ちしております。
興味をお持ちの方は下記までご連絡ください。

かしま病院地域連携課
TEL:0246-76-0350
Mail:kashima.hospital@gmail.com

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