第134回 家庭医医療セミナー in いわき ~実践家庭医塾 Online~ 2022年11月

令和4年11月24日(木)、第134回家庭医療セミナーを開催しました。

今回は、東京慈恵会医科大学附属病院・初期研修医2年目の射手矢雄介が症例発表を行いました。

【患 者】家中 良子さん 95歳・女性
【主 訴】動悸、呼吸苦、浮腫
【現病歴】もともと高血圧、狭心症、心室中隔欠損症術後などの既往があり、みちや内科かかりつけ。以前から全身の浮腫を認めていたが、X-7日頃から動悸が著明になった。X-3日頃から呼吸苦が出現し、浮腫の増悪も認めた。X日にみちや内科を受診し、入院加療目的で同日当院を紹介され、救急搬送された。
【既往歴】高血圧、狭心症、心室中隔欠損症術後(60歳頃@東京女子医大)、心房細動、慢性心不全、C型肝炎、帯状疱疹
【常用薬】ベラパミル 40㎎ 2T2× 朝・夕食後  レザルタス配合錠HD 1T1× 朝食後 シロスタゾール 100mg 2T2× 朝・夕食後  アルファカルシドール 1μg 1T1× 朝食後  タケキャブ 10mg 1T1× 夕食後  フルニトラゼパム 1mg 1T1× 就寝前
【生活歴】
・独居
・要介護2
・家族:長女(中央台鹿島/主婦)、次女(中央台飯野/仕事あり)
・入院前は長女が毎日日中に安否を確認し、夜は次女が週3日(火・木・日)泊りで面倒を見ていた。
・週3日(月・水・金)訪問介護を利用し、自宅内の掃除を手伝ってもらっていた。
【バイタルサイン】
意識レベル:GCS E3V3M6、JCS3  体温:37.7℃  血圧:139/95 mmHg
心拍数:157bpm・不整  SpO2:92%(mask 6L)
【身体所見】
顔面(眼瞼、口唇)浮腫+++、四肢浮腫+++、眼瞼結膜蒼白なし、皮膚冷感なし、チアノーゼなし
胸部:心音不整だが明らかな心雑音を聴取せず、ラ音を聴取せず
腹部:下腹部膨隆著明・軟、腸蠕動音正常
【心電図】HR140 bpm、心房細動、軸正常、ST-T変化なし
【採 血】BNP 201.4pg/ml
【胸部CT】両側胸水貯留
【背 景】
・カルテ上は少なくとも二年以上前から心不全症状があった。
・本人に病識はあったが、これまで心不全や心房細動の強化療法を希望しなかったため、内服はほとんど変更せず、検査も必要最低限しか行っていなかった。
・徐々に体調不良で外出も億劫になり、みちや内科の受診も毎月娘が代わりに薬を受け取りに行くだけになっていた。(それでも半年に一回程度はワクチンや体調不良などで受診していた。)
・みちや内科には開業以来通院しており、先生や看護師さんなども皆優しく、本人はとても思い入れがある。
・また、「家ほどいい場所はない」という思いも強く、入院はしたくないと度々口にしていた。今回は呼吸苦と浮腫が強く、短期間の入院を希望している。

【本日のディスカッションのテーマ①】
・現状の患者さんにとって“入院”は最善の選択か。(入院しないで済む選択肢はないか)
・短期間の入院を希望している患者さんにどのような治療計画を立てるか。

【本日のディスカッションテーマ②】
・家族内で意見が割れている場合、どのように対応するのがよいか。(自宅療養を選択する場合、長女の思いにも寄り添う必要がある。)
・自宅療養に向けて医師としてできる手助けはなにか。

今回の家庭医療セミナーでは上記のような症例を、参加者皆で検討し意見を出し合いました。
本事例のように、本人含め家族内で意見が割れた際にどのように対応するか?患者さん本人の意思が最も尊重されるべきではあると思いますが、それを実現するために、家族内カンファを設定し、それぞれの考えや不安点などを聞き取り、解決していく必要があるとの意見も出されました。

次回は、12月はお休みしまして1月を予定しております。
家庭医療セミナーでは多くの方のご参加をお待ちしております。興味をお持ちの方は下記までご連絡ください。

かしま病院地域連携課
TEL:0246-76-0350
Mail:kashima.hospital@gmail.com

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