第127回 家庭医療セミナー in いわき~実践家庭医塾 Online~ 2022年3月

令和4年3月24日(木)、第127回家庭医療セミナーをオンライン形式で開催しました。
今回は、当院総合診療科の藤井慎之輔先生の事例発表を基に進めました。

事例発表  かしま病院総合診療科 藤井慎之輔

患者は75歳男性、独居、要介護3

2021年10月29日~11月1日A病院で十二指腸潰瘍の治療のため入院。A病院入院中に勝手に飲食することや点滴の自己抜去などが度々みられていました。

11月1日の内視鏡検査で明らかな出血がないことを確認し流動食を開始したが、本人の帰宅願望が強く入院継続が困難となったため、PPI内服継続を条件に同日退院。

退院後は、2021年11月22日頃から血便があったが放置していたそうです。11月27日に週に1回妹が自宅を訪問していたところ全裸で倒れていた本人を発見し、A病院は急患対応で受け入れ困難とのことで当院へ搬送され、即日入院しました。

受診時の検査では、貧血(Hb6.3)、黒色便あり、十二指腸潰瘍が疑われ加療が開始されました。

【現往歴】

高血圧、糖尿病、市内Bクリニックに通院歴あるが自己中断していた

60歳~ 糖尿病
69歳 右大腿骨頭置換術
72歳 アルコール酩酊で当院入院
75歳 左足首骨折、十二指腸潰瘍

ディスカッション①

・さらに把握しておかなければならない情報などありますか
・十二指腸潰瘍が軽快した後にどのような介入をすればいいでしょうか

ディスカッションで上がった意見をご紹介します。

要介護認定が何でおりたのか、主治医意見書が出されていたのでかかりつけがあったのではないか、糖尿病などどの程度で病院にかかっていたか、A病院から情報提供やBクリニックに診療情報提供書の依頼をしたいところ。また、要介護3というのはケアマネがいるのでそこからの情報収集もできると思う。生活継続にあたって住まいの状況や、兄や妹の家庭状況を把握しておく必要がある。患者さんと救急車で再開にならないように、継続的に病院に来てくれるようなチームを作っていく必要がある。

ADLや筋力の評価をした上で、認知機能の評価をした方がいい。ケアマネからの情報や、患者さんと信頼関係築けていたのか、包括センターが絡んでいたのであれば、主治医が決まっていない状態であったということが予想される。患者さんが医療のシステムに組み込まれていない状態であったのではないか。

患者さんからは聴取できないのか。どこまで自分のことを認識しているのか。患者さんが判断できないような状況の中で医療側がどのようなリソースを割けばいいのか。誰かに老いを迎えていくにはどうしたらいいのかを話したい。

事例の続き

3月10日に転院しリハビリを進める方針であったが、転院時は独歩可能であり、認知機能低下もあって病院から出ていこうとする場面が見られた。入院継続は困難と判断し、包括支援センター・ケアマネに協力をお願いし3月12日に退院となった。

後日、外来に来ることはなく、本人の電話は繋がらない状態で、消息は確認できていない。

ディスカッション②

・これまでの経過を踏まえて退院後にどのような介入をするのが良かったでしょうか

退院前に入院継続に同意いただけなくてバタバタしている中での退院だったのでどこまでできるかという話だった。その状況下だとその日に外来予約してきてもらうとしても本人だけでは来てもらえない可能性が高いと思うので、地域包括の方やケアマネがもし同伴可能であれば外来につれて来てもらう依頼をしてみたらどうか。どうしても難しい場合は、本人の拒否が無ければこちらからお邪魔して訪問診療につなげるのも手ではないか。症状出ているときに関してはA病院の時は入院していたが、症状がなくなってしまうと入院している意味や治療はやらなくていいとなってしまいアプローチが難しいので、症状が出ているときに対応ができたらいい。

外来は難しいので、こちらから出向いて行かないと難しい患者さんなのだと思った。治療というより安否確認でもいいのかな。包括支援センターが頑張りすぎてしまうと医療の介入が難しいことがあるから連携していくことが重要であると思う。

急性期治療と慢性期治療が混在しているのでこういう風な形になってしまった。A病院での治療は解決して、あとはよろしくということでかしま病院に来たのだと思う。A病院にとっては最後の生活は知ったことではないのだろう。患者さんが今まで自分で好きなように過ごしてきてしまっていたので、こちらが介入してしまうと、それは我々の自己満足となり、結局はA病院と同じような満足感に浸ってしまうのかもしれない。

発表者の藤井先生からのコメントです。

「患者さんが入院しているときにあまり話をせず、退院後のフォローができていなかったです。訪問診療などで介入できていればよかったのかなと思いました。今後はできる範囲で連絡を取って安否確認はしていきたいです。」

参加した先生方からコメントです。

中山大先生

「入院していると、病棟の看護師さんが深くかかわってくれるケースがあるので看護師さんから情報収集して看護師さんたちのアドバイスを聞くこともいいのではないでしょうか。個人の問題に関して入り込んでくれる人が一人でもいると、家族から聞いた意見などを聞くことができます。」

岩井先生

「ケアマネが非常に困る症例だと思うので、本人に直接連絡を取るのは難しいので、ケアマネに何かあれば連絡くださいと伝えておき、ケアマネと連携が取れると良いと思います。」

葛西先生

「これでもかこれでもかと難しいケースが出てくるかしま病院の実践家庭医療塾であります。チャレンジングな専攻医の方々が果敢に解決先を考えてくれているのは素晴らしいと思います。カナダで高齢者のケアで指導医によく言われたのは、「誰も簡単だとは言っていない」という風なセリフをよく言われました。その中でどれだけ本人や家族の意向に少しでも添うことができるかどうかについて、絶えずチャレンジしていくかという感じですよね。頑張ってやっていきましょう。藤井先生、永井先生は引き続き来年度もかしま病院でお世話になりますので、難しいケースの宝庫のいわきで頑張ってもう1年トレーニング積んでもらいたいなと思いますし、今日集まりの方は2人をサポートしていってほしいと思います。来年度もどうぞみなさんよろしくお願いいたします。」

次回開催予定:2022年4月21日(木)19:00

当セミナーへの参加につきましては、
 かしま病院地域連携課
  TEL:0246-76-0350
  Mail:kashima.hospital@gmail.com
までお問い合わせください。

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