家庭医療セミナー in いわき~実践家庭医塾Online~ 2021年9月

令和3年9月30日(木)家庭医療セミナーを会場とオンラインのハイブリッド形式で開催しました。

今回の発表者は、当院総合診療科の藤原先生です。
「ころなな日々」と題して、新型コロナウイルス感染症の後遺症にまつわる症例をもとに学びを深めました。

 

症例①

患者さんは50歳代の女性で、コロナ発症から2日後に入院しました。入院期間は15日で、その時の状態は、中等症Ⅱ(酸素吸入が必要な状態)です。治療後は退院しましたが、発症日から38日後に当院を受診しました。

頭痛、めまい、胸や背中の痛み、脱毛の症状があり、いわゆるコロナ後遺症を疑っての受診でした。
血液検査は軽度の異常はみられるものの大きな問題はなし。
肺のCTでは、線維化を伴った陰影が残っている状態でした。

ここで症例を基にしてグループディスカッションです。
 ・この患者をコロナ後遺症として判断しても良いか
 ・後遺症と判断した場合、どのように対応したら良いか
 について討議しました。

 

各グループの発表では、
・症状やCTの結果は、典型的な後遺症を示しているので、コロナ後遺症として対応するべきではないか。

・コロナ後遺症に関するガイドラインや手引きなどは出ていないと思うので、判断が難しい。

・コロナの治療経過がわからないことや、後遺症を疑う症状は出ているものの、根拠が弱いので断定ができない。
といった意見が挙がりました。

ディスカッションの後は、実際に行った対応についてのお話です。

この症例では、コロナ後遺症として対応をしました。
経時的に症状が改善することを見込んで、外来で経過観察をしています。
コロナ後遺症では、脳MRIに異常が出る場合があるため、その後の外来で検査しましたが、異常ありませんでした。
今後も外来で継続して対応していく予定です。

 

症例②

患者さんは40歳代の男性です。

コロナ発症後ホテル療養していましたが、症状が悪化したため入院になりました。
入院時は中等症Ⅰ(肺炎所見あり)⇒入院中に中等症Ⅱ(酸素投与)に悪化しましたが、その後回復し、退院まで11日間でした。


しかし退院後も倦怠感、脱力感、しびれが持続しており、発症日から27日後に当院外来を受診しました。
その他の症状として、考え事をしようとするとしびれが出る、労作時の息切れ、脱力、不眠などもみられる状態です。
既往歴にうつ病があるため他医療機関に通院中で、イフェクサーSR、サイレースを処方されていました。
採血は特に異常なく、CTでは肺炎の影が残っている状態でした。

ここで2グループに分かれてディスカッションです。
・コロナ後遺症なのか、その他のメンタル不調なのか
・この患者さんに対してどのように対応したらよいか
 という点を中心に話し合いです。

 

ディスカッション後の発表では、
・うつ病を持っているので、単純に後遺症の判断ができない。コロナ治療のPTSDなどもあるかもしれない。

・コロナ後遺症の対応については、まだまだ経験している医師が少ないため、多くの医師が様々な症状を見られる体制があるとよいと思う。どのように体制を構築してくかが今後の課題。

・このような難しい症例を担当する医師のケアも必要。

・コロナを発症する前は、どんな症状があったのかわからないので判断が難しい

・うつ病の治療を並行して行うのであれば、そちらの主治医に見てもらうのも一つの手段
という意見が挙がりました。

ディスカッションの後は、実際の対応を確認しました。
 この症例では、うつ病の影響で症状が出ているとも考えられますが、コロナ後遺症が主体と判断しました。当院初診から11日後に再診でした。症状は少し良くなったという自覚がありましたが、倦怠感、脱力感、労作時の呼吸苦や脱力感は持続しています。不眠は強くなったとのことでした。
 郡山市のある医療機関でコロナ後遺症外来を開設している、という情報があったため問い合わせてみましたが、後遺症外来は実施していませんというお返事でした。
 うつ病の治療をしている精神科への紹介も考えましたが、コロナというワードだけで及び腰になってしまうかもしれないと考え、当院で継続して経過観察することにしました。
 外来でフォローしつつ、困りごとがあったらいつでも相談しに来てください、とお話ししています。

 

コロナウイルス後遺症や診断についての解説

症例発表に続いて、藤原先生からコロナ後遺症関連の解説がありました。

・疲労感、倦怠感、息苦しさ、筋力低下、睡眠障害、思考力や集中力の低下、脱毛などは6か月以上遷延する場合がある

・対処方法として、患者自身のセルフケアを促す、運動を勧める、特定の薬剤の使用などがある

・コロナに関しては、今のところ統一した定義はないため、現状では除外診断(その他に説明がつく疾患がないこと)

・英語での文献検索をする際のポイント

など、この他にも多くの情報を共有していただき、藤原先生の発表は終了となりました。

 

参加した開業医の先生からは
「開業医ができることとして、発熱外来、抗原検査などを実施してきましたが、ポストコロナ患者の対応も考えていきたいです。ポストコロナ患者の対応に当たっては、スタッフも恐怖感などあると思うので、勉強会などを実施していきたいと思います。」
との意見がありました。

最後に葛西先生の講評です。
「コロナに関してはまだまだデータが少ないので、これから集積していくことで明確になることが多いと思います。日本のデータも取れるとよいのですが、手続きなどが煩雑なので、データを使えるようになるまで時間がかかる状態です。プライマリケアを担う人が、ケアに関する情報をシェアできる体制が重要なので、このような場を通して情報共有することは、今後非常に有用になると思います。」

次回の開催は10月28日(木)19:00開始予定です。
オンラインでも参加できますので、興味のある方は、かしま病院地域医療連携課(TEL:0246-76-0350)までお問合せください。

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